あっという間に切れるスマホのバッテリーや、タブレット端末。せめて1週間
くらいは持ってくれれば…もしかしたらそんなロングランが可能になるかもしれな
い技術が生まれようとしています。それどころか充電が不要になる可能性も…そんな
技術がいま世界中で開発されています。それがエネルギーハーベスティングという技術です。
身の回りにありながら利用されていない小さなエネルギーを収穫して(ハーベスト
して)、発電するテクノロジーです。身の回りのさまざまな環境からエネルギーを
取り出して、発電するということから、「環境発電」とも言われています。
エネルギーハーベスティングのいくつかはすでに実用化されています。
神戸市を本拠地とするサッカーJリーグチームの「ヴィッセル神戸」。そのホーム
スタジアムである「ノエビアスタジアム神戸」には、振動で発電する席があります。
試合が盛り上がり、興奮したサポーターがジャンプするたびに床に埋め込まれた素子
が反応して発電するのです。この席で発電された電気は、試合終了後の誘導灯の電源として利用されています。
このほか、住宅設備メーカーのリクシルでは、東北大学と共同で、トイレの水流を
利用した非常時用の発電システムを開発しています。公共施設やビルのトイレなどで
は衛生効果を高めるために自動で水を流しますが、この水の水流を使って発電するのです。現在大学構内で実証実験中です。
3.11の震災以後、再生可能エネルギーの積極利用が日本のテーマとなっていま
すが、大規模なメガソーラーや風力発電に頼らずとも、必要にして十分なエネルギー
の獲得とその利用技術が着々と生まれているのです。
人混みの中の雑踏、幹線道路沿いの騒音、工場から出てくる排熱、人間の体温…実
は身の回りにはまだまだ未利用のエネルギーが埋もれています。エネルギーハーベス
ティング技術が拓く、これからのエネルギーの未来と生活、ビジネスの変化を読み解きます。