社内のコミュニケーションツールとして昔から利用されている社内報。近年はネットの普及に応じ、イントラネットやブログ、メルマガ形式など多様化していますが、この数年は紙の社内報に揺り戻しがあるようです。
家電大手のパナソニックはしばらくネットだけの社内報をつくっていましたが、一昨年2年ぶりに紙の社内報を復活させました。
パナソニックが社内報を紙から電子メディアに移行させたのが2012年。当時パナソニックは業績回復のための大鉈を振るっていた頃です。削れるものは徹底的に削るべきだとして、当然紙の社内報も対象になりました。
もとより電子化すれば、海外へそのまま配信できるので、パナソニックのようなグローバル企業では願ったり叶ったりだった、はず。それを復活させるには、相当勇気が要ったでしょう。発行部数11万部。A4サイズ36 ページで、年4回なので、編集外注費に印刷を含めたら4,000万円は軽くかかります。
お金も手間もかかる紙の社内報を復活させた理由は、読まれなかったから。自社メディアである社内報は、何より社員に読んでもらわなければその存在意義はありません。長い特集などはネットではいろいろ工夫しても読んでもらえなかったと言います。
社内報を読んでもらうために企業はいま、いろいろ工夫をしています。例えばトヨタでは社内報は、上司が手渡しで部下に渡すそうです。「それだけ大事なものだから、家庭でもちゃんと読んでほしい」という意思表示なのです。
また社内報は人材確保のツールとしても注目を集めています。例えば楽天は、社内報ではありませんが、自社の雑誌メディアを転職していった人材にも送っています。こうすることで、退職した元社員が自社に戻ってくる機会をつくっていると言います。
人材不足時代。社員に会社の価値観を浸透させ、パフォーマンスを上げるためのツールとして見直される社内報。その背景とその計り知れない効用を探っていきます。